夢のマイホームを建てる際、ハウスメーカーや工務店選びと並んで、多くの方が頭を悩ませるのが「資金計画」ではないでしょうか。
家は一生に一度の大きな買い物だからこそ、失敗は避けたいもの。
しかし、「いくら借りられるのか」「無理なく返済できるのか」といった疑問は尽きません。
住宅ローンは、銀行が「貸せる」金額を提示してくれますが、それは必ずしもあなたが「無理なく返済できる」金額とは限りません。
家の購入費用だけでなく、その後の生活費なども含めた総合的な視点で計画を立てることが非常に重要です。
この記事では、注文住宅を建てるために必要な年収の目安と、後悔しないための具体的な資金計画のポイントをわかりやすく解説します。
注文住宅の総額はどのくらい?全国平均と地域差

image:注文住宅の教科書:ゼロから始める理想の住まい
まず、注文住宅を建てる際の総額がどのくらいになるのかを見ていきましょう。
全国平均では、建物本体価格、土地代、諸費用を全て合わせると3,500万円から4,500万円程度が目安と言われています。
しかし、この金額は地域によって大きく異なります。
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地方の場合(例:三重県松阪市) 私たちの地域である三重県松阪市では、全国平均と同程度の3,500万円から4,500万円程度が目安となります。内訳としては、建物が2,500万円から3,500万円、土地代が500万円から1,000万円、諸費用が300万円から800万円といったイメージです。
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都市部の場合(例:東京) 東京のような都市部では、土地代が非常に高騰するため、総額も大幅に跳ね上がります。例えば、都内で土地15坪程度の木造3階建ての建売住宅が、6,000万円から8,000万円程度になることも珍しくありません。これは地方の倍近い金額になるケースもあります。
このように、家を建てる場所によって、総額はもちろん、土地と建物の費用バランスが大きく変わってくることを念頭に置いておく必要があります。
具体的な資金計画:いくらまで借りられる?無理なく返済できる額とは?

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次に、実際にいくらまで住宅ローンを借りられるのか、そして、いくらなら無理なく返済していけるのかを具体的に見ていきましょう。
住宅ローンの借入上限目安
一般的に、住宅ローンの借入上限は年収の5倍から7倍と言われることがあります。
例えば、年収500万円の方であれば、2,500万円から3,500万円が目安です。
しかし、これはあくまでざっくりとした目安であり、金利の変動によって月々の返済額が変わるため、注意が必要です。
より現実的な目安として、多くの銀行が採用しているのが年間の返済負担率です。
これは、年収に対して年間でいくらまでなら住宅ローンを返済できるかを示す割合です。
銀行によって異なりますが、年収の30%から40%が上限とされています。
例えば、年収400万円の方が年収の30%を返済限度額とすると、年間120万円、つまり月々10万円が限度額となります。
ただし、銀行が「貸せる」金額が、そのままあなたが「借りても大丈夫な金額」ではない点に注意が必要です。
携帯電話料金や車のローンなど、他の毎月の固定費があれば、その分は住宅ローンの借入限度額から差し引かれて計算されます。
仮に年収400万円で月々11.6万円が銀行の限度額だとしても、携帯電話に2万円、車のローンに5万円払っていれば、実際に住宅ローンで借りられるのは4.6万円分しか残らない、という計算になることもあります。
無理なく返済できる「安全ケース」とは
私たちは、ライフプランナーの方々と話す中で、「限度額目一杯まで借りるのは良くない」という結論に至っています。
住宅ローン以外の生活費や将来の貯蓄などを考慮すると、銀行が提示する上限額では家計が苦しくなる可能性があるからです。
そこで、安心して無理なく返済できる目安として、年収の約27%という「安全ケース」を推奨しています。
これは、住宅ローン以外の支出や将来設計を考慮した上で導き出された、より現実的な目安です。
例えば、年収500万円の方が年収の27%を月々の返済に充てると、年間135万円、つまり月々約11万2,500円が無理なく返済できる金額となります。
これをローンシミュレーターに当てはめて金利0.5%、35年払いと仮定すると、約4,200万円の借入が無理なく返済できる目安となるでしょう。
このように、「年収の5~7倍」といった単純な目安よりも、「年間返済負担率27%」の目安で考える方が、将来的な金利上昇リスクなども考慮した、より安全で現実的な資金計画に繋がります。
年収別!無理なく建てられる注文住宅の目安

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では、具体的な年収別に、どの程度の注文住宅を無理なく建てられるのかを見ていきましょう。
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年収400万円の場合 月々の無理なく返済できる目安は、約9万円となります。シンプルなプランで建物の規模をコンパクトに抑えることで、土地・建物・諸費用込みで3,500万円程度の住宅も視野に入ります。ただし、単独の年収400万円では、突発的な出費があった際に家計が圧迫される可能性も考慮し、やや心許ないと感じる場合もあるかもしれません。
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年収500万円の場合 月々の無理なく返済できる目安は、約11万2,500円となります。これにより、約4,200万円程度の借入が可能になり、ある程度建物のグレードを上げたり、多少立地条件の良い土地を検討したりすることも可能になります。
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年収600万円の場合 月々の無理なく返済できる目安は、約13万5,000円(年収の27%で計算)となります。借入目安額は約5,200万円となり、建物の仕様や設備、長期的なメンテナンス費用まで含めて、幅広い選択肢の中から理想の住まいを追求できるでしょう。
世帯年収を考慮する
ご主人と奥様の収入を合算した「世帯年収」で考えることで、より安心で柔軟な資金計画が立てやすくなります。
例えば、ご主人の給与で住宅ローンを支払い、奥様の給与で生活費を賄うといった計画も可能です。
世帯年収で450万円から500万円以上あれば、家計にゆとりが生まれ、より安心感が増すと言えるでしょう。
見落としがちな「追加費用」の落とし穴

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注文住宅の資金計画で最も見落としがちなのが、建物本体価格以外の「追加費用(諸費用)」です。
これらの費用は、建物本体価格の15%から25%にも上ることがあります。
主な追加費用には以下のようなものがあります。
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銀行関連費用
- 保証料: 住宅ローンを借り入れる際にかかる費用で、借入金額の1.5%~2.2%程度が目安です。これは、万が一ローンを返済できなくなった場合に備えて、銀行が保証会社と契約する保険のようなもので、その費用を施主が負担するケースが多いです。例えば3,000万円借りた場合、2%なら60万円にもなります。
- 事務手数料
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保険料
- 火災保険料など
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登記費用
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工事関連費用
- 地盤改良費用: 土地の状況によっては必須となる場合があります。
- 外構工事費用: 駐車場や庭、アプローチなど、建物の外側の工事費用です。
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その他
- 建物のグレードアップやオプション費用も、当初の予算から追加で発生する可能性があります。
これらの費用を事前にしっかりと把握し、資金計画に含めておくことで、後から「こんなはずではなかった」と後悔する事態を避けられます。
知らずに進めてしまうと、最終的に「建築費を削るしかない」という選択を迫られる可能性もあるため、注意が必要です。
まとめ:賢い資金計画で理想の注文住宅を実現

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今回の解説をまとめると、以下のようになります。
- 世帯年収が300万円台の場合、注文住宅の実現は厳しいケースが多いです。
- 年収400万円強であれば、シンプルなプランでコンパクトな家であれば、注文住宅を建てることは十分可能です。
- 年収500万円以上であれば、ある程度のグレードアップや、より良い立地条件の土地も視野に入れることができるでしょう。
- 年収600万円以上であれば、長期的なメンテナンス費用まで考慮した上で、設備や仕様の選択肢がさらに広がります。
現在の新築住宅は「高い」と言われがちですが、様々な工夫を凝らし、無駄を省き、建物をコンパクト化していくことで、家づくりの夢はまだまだ諦めるものではありません。
今回の記事が、皆さんの家づくりの資金計画を考える上で、少しでも参考になれば幸いです。