近年、社会全体で働き方の多様化が進み、「新卒1年目で転職を考える」という選択が特別なことではなくなっています。厚生労働省の最新データによると、新卒3年以内の離職率は約30%に達しており、その中でも入社1年以内の離職者は増加傾向にあります。
背景には、終身雇用の崩壊やリモートワークの普及、そして若手層の「自分らしいキャリア」を求める意識の高まりがあります。
一方で、「1年目で辞めたら不利になるのでは」「採用担当者からマイナス評価されるのでは」と不安を抱える人も多いのが現実です。
そこで本記事では、2025年版の最新傾向として、新卒1年目の転職理由ランキングTOP5を紹介し、あわせて採用側がどのような視点で候補者を評価しているのかを詳しく解説します。
2025年版|新卒1年目の転職理由ランキングTOP5
第1位:仕事が合わない・やりがいを感じない
最も多い理由が「仕事内容のミスマッチ」です。
入社前のイメージと実際の業務内容が異なり、「思っていた仕事と違う」「成長実感がない」と感じるケースが多く見られます。
特に2025年は、AIや自動化による業務効率化が進む一方で、単調な作業が増えたことも影響しています。新卒社員の多くが「自分の強みを活かせていない」と感じ、より挑戦できる環境を求める傾向があります。
第2位:人間関係や職場の雰囲気が合わない
上司との相性やチーム内のコミュニケーション不足も、転職理由として上位に挙がります。
特にオンライン環境でのやり取りが増えた現在、関係構築の難しさを感じる人が増えています。
「相談しにくい」「評価が不透明」といった職場環境は、早期離職につながりやすい要因となっています。
第3位:給与や待遇に不満がある
物価上昇や生活コストの増加により、給与水準への意識は年々高まっています。
2025年は特に、「業務量に対して給与が見合わない」「他社との待遇差が気になる」と感じる若手が増加傾向にあります。
また、リモートワーク手当や副業制度の有無など、柔軟な制度面も転職判断の一因となっています。
第4位:成長環境・教育体制に不安を感じた
「研修が形だけ」「フィードバックが少ない」など、教育面での不満も増えています。
入社1年目は、キャリアの方向性を決める重要な時期です。にもかかわらず、十分なサポートが受けられないと「この会社で成長できるのだろうか」と不安を感じ、転職を決断するケースが少なくありません。
第5位:将来のキャリアが見えない
「この先、自分がどうなっていくのか分からない」という不安から転職を選ぶ人も多くなっています。
AIやDXの進化により業界構造が変化する中で、キャリアの方向性を自分で描けるかどうかが重要になっています。
新卒社員が「キャリア形成を支援してくれる環境」を求める傾向は、2025年も続くと見られます。
採用担当者は“転職理由”のどこを見ているのか
短期離職は一見マイナスに映るものの、採用担当者が重視しているのは「辞めた理由」ではなく「その後の行動」と「学び」です。
企業は新卒1年目の転職者に対し、以下のような視点で評価しています。
● ポイント①:「ネガティブ転職」か「ポジティブ転職」か
採用担当者が最も重視するのは、転職理由の方向性です。
「人間関係が悪かった」「残業が多かった」など、現職への不満を中心に語る“ネガティブ転職”は印象を悪くします。
一方で、「自分の強みを活かせる環境に挑戦したい」「より成長できる分野に進みたい」といった“ポジティブ転職”であれば、前向きに受け取られる傾向があります。
● ポイント②:一貫したキャリアの軸があるか
採用担当者は、転職理由だけでなく「次の目標が明確かどうか」を見ています。
「なぜ辞めたか」よりも、「何を目指して次を選んだのか」を説明できる人は評価されやすくなります。
短期離職でも、自分の価値観やキャリアの方向性を一貫して語れる人は信頼を得やすいです。
● ポイント③:成長意欲と反省があるか
1年目で転職する場合、「なぜうまくいかなかったのか」「何を学んだのか」を冷静に振り返ることが重要です。
企業は、過去の経験を糧にできる人を高く評価します。
単なる「失敗」ではなく、「改善のための行動」を取っているかが採用の決め手になります。
1年目転職を成功に導くための伝え方と準備
● 面接での伝え方:ネガティブ理由をポジティブに変換
転職理由をそのまま話すのではなく、「課題→学び→次に活かす」という流れで伝えることが大切です。
たとえば、「上司と合わなかった」という理由も、「チームで意見を共有できる環境で力を発揮したい」と言い換えることで前向きに受け取られます。
● 職務経歴書では「成果より成長」を意識
1年目の場合、大きな成果よりも「どのように努力し、何を学んだか」を具体的に書くことが重要です。
「業務改善の提案を行った」「顧客対応を通じて課題解決力を磨いた」など、小さな経験でも具体的な行動と学びを示すことで、成長意欲を伝えられます。
● 転職エージェントを活用して客観的な視点を得る
短期離職者は、自分の判断が正しいかどうか迷いやすい傾向があります。
転職エージェントに相談することで、客観的なフィードバックや自分に合った企業の紹介を受けられます。
特に「第二新卒専門エージェント」を利用すると、短期離職に理解のある企業を見つけやすくなります。
● 在職中に転職活動を進める
退職してから転職活動を始めると、焦りから妥協してしまうケースもあります。
在職中に情報収集を進め、内定を得てから退職することで、精神的にも安定した状態で活動できます。
企業が評価する“これからの人材像”とは?
2025年以降の採用市場では、「経験」よりも「考え方」や「適応力」が重視される傾向が強まっています。
● AI時代に求められる“自己学習力”
技術や業界構造の変化が激しい中で、AIをはじめとする新しいツールを自ら学び活用できる人材が評価されています。
「前職で学んだことを次にどう活かすか」という姿勢を示せる人は、短期離職でも高い評価を得られます。
● 目的意識を持って行動できる若手が強い
採用担当者は、若手であっても自分の意思で行動し、キャリアを主体的に描ける人を求めています。
「与えられた仕事をこなす人」ではなく、「自ら仕事を作り出せる人」が活躍できる時代です。
● 転職を“失敗”ではなく“早期の気づき”と捉える
1年目での転職を「逃げ」と考える必要はありません。
むしろ、自分の適性や価値観に早く気づけたことは大きな強みです。
採用担当者も、「失敗を通じて学びを得た人」を歓迎する傾向があります。
まとめ
新卒1年目の転職は、かつてはネガティブに捉えられがちでした。
しかし2025年の今、採用側が重視しているのは「期間」ではなく「考え方」と「行動」です。
大切なのは、「なぜ辞めたのか」ではなく「次にどう進むのか」を明確に語れるかどうかです。
自分のキャリアを冷静に見つめ直し、目的を持って行動すれば、1年目の転職でも十分に成功できます。
短期離職を恐れるのではなく、それを糧に“自分らしいキャリア”を築く時代が、すでに始まっています。